公平性の呪縛に関する記事「集客増へ公平性再考を」を茨城新聞の茨城論壇に寄稿し、2017年6月17日に掲載されました。
この記事は結構反響が大きくて、「上司に読ませました」という感じの報告を何人かの方から頂きました。
茨城論壇(2017・6・17)


広報、観光、シティプロモーションなどの魅力発信を担当している公務員たちが困っていることが「公平性」への配慮です。特定のお店を取り上げると公平性に反してしまうからと、観光パンフレットやグルメマップにはお料理の質や有名度合いなど加味せずに地域のお店をなるべく多く公平に掲載しています。例えば、1杯数百円のラーメンを食べるために高速代まで使って移動される方もいるように、美味しいお料理、有名なお店はとても高い集客効果があります。しかし、公務員の世界では特定のお店だけを取り上げることはできないと考えているのです。

視点を変えて、観光客の目線で考えてみましょう。今のパンフレットには店舗を多く公平に掲載しているために、1店舗当たりに割いているスペースが狭く、店名、住所、電話番号、数行のお店の特徴、写真1枚程度の情報しか載っていません。あまりに多くの店舗が載っているために、どう選んでよいか分からなくなり、適当にお店を選んでしまいそうです。この中から適当に選んだお店が美味しければ、そのまちの印象は良いものになるかも知れませんが、もしお口に合わないと、まちの印象は悪くなるのではないでしょうか。また家族や友人に旅の印象を聞かれた時に「お料理がイマイチ」と言われてしまったら、訪問する気持ちが湧きませんよね。観光客は、公平な情報を必要としているのではなく、地域の一番店が知りたいのであって、地元のオススメが知りたいのです。

全てのお店や観光スポットを掲載するのではなく、有名店などの掲載スペースを大きく取り、素敵な写真を多く載せ、お店のこだわり、利用者の声などをしっかりと書いた方が、訪問する気になるはずです。まずは観光客が来てくれないと何も起きません。いかにして人を呼び込むかを1番最初に考えなければならないはずなのに、公平性に囚われ過ぎているため、観光客が本当に必要とするものを置き去りしているのではないでしょうか。

過度な公平性の呪縛から離れ、地域の一番店を積極的に伝え、まちに呼び込むことを最優先とする。ラーメン一杯を食べただけで帰られてしまうと、まちにお金が落ちませんから、街歩き、工場見学、農業体験など様々な提案を行い滞在時間の増加を図ります。例えば2時間多く滞在してくれれば、1杯お茶を飲むでしょうし、4,5時間滞在してくれれば、今度は別のお店でご飯を食べてくれるかも知れません。更にもっと多くの楽しい提案を行えば、今度は泊りがけで遊びに来てくれる可能性が高まります。このように地域の一番店や一番素敵な観光スポットをフックにして呼び込み、その後で滞在時間を増やすように仕掛けることにより消費の最大化を目指すのです。

仮に観光ガイドを作るのに100万円の予算をかけて、100店舗掲載したとすると、これは100万円を公平に1万円ずつ掲載店舗のために使っている形になりますが、これからは100万円を元手にして、それ以上のお金をまちが稼ぐ方法を考えるという発想の転換が必要なのです。

日本国憲法 第15条 第2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」となっていますが、今、私達が行っている「全体の奉仕者」に関する解釈は、「全体」を飲食店全体として捉えており、「全体」をまち全体、地域全体として捉えていないだけに過ぎないのではないでしょうか。「公平性」の捉え方を皆さんと一緒に考え直す時期がきていると思っています。皆さんはどうお考えでしょうか。